酒束かかえて。〜芸妓の夏休みIN小布施〜小布施でっせ〜

8月3日(金)(2001年夏)
今夜も相変わらず死ぬ程暑い!
明日の長野県にある小布施ワイナリーでのコンサートを控え、この日芸妓たちの間でメールや電話が飛び交う。
「長野って暑いのかなぁ〜。」
「さぁ、小布施って長野のどの辺に位置するの?」
「ねぇねぇ、浴衣持って行く?」
「あ、それよりさ〜花火買っちゃったぁ〜みんなでやろうよ!!」

「おやつはいくらまで?」っていうのはさすがになかったけど、気分はみんな夏休みの遠足。楽器と楽譜を忘れないようにしなくちゃね。

さて、次の日。みな午前10時頃には都内を出発。3台の車でそれぞれ小布施に向かう。
この日の朝の天気予報では最高気温、東京=32°長野=35°。
これだけみると、東京より長野の方が暑いのかしら? 予想がつかない。

この日は土曜日。道路は行楽渋滞。靖奴以外は普段すいている平日にしか遠出しない芸妓たちはちょっとうんざり気味。「なんでこんなに混んでるの〜っ!!!」

それでもなんとか都内を抜け出し、あたりの風景も変わって行き夏休み気分がどんどん高まって行く。途中のパーキングでひと休み。うわぁ。やっぱり、空気が全然違う。山の中のせいもあって涼しい。この新鮮な空気だけでさっきまでのうんざり気分は吹き飛ぶ。

小布施の山 さて、ここからは山越えというか、山潜り?
「トンネルを抜けるとそこはまたトンネルだった。」の連続。
いったい何個トンネルを抜けたんだろう。猶に30個は超えると思う。
この日は大気の状態も不安定で、山は雲に覆われ、雲の中に突っ込んで行く感じ。かとおもうと、日ざしをがんがん浴びてるのに土砂降りになったり。これぞ女心と山の天気!?

そして、約5時間後。やっと小布施に到着。あ〜この空気。駐車場に車を止めワイナリーへむかう。
その1分にも満たない間に「なんか、小さい頃おばあちゃんの家に遊びに来た感じ〜。」
そう、初めてなのになんか懐かしい匂いがするの。

そして「小布施ワイナリー」に到着。
想像していたよりこじんまりとしていてすごく家庭的な雰囲気。
「こんにちは〜〜〜〜!!!!」
「あ〜。いっらっしゃ〜い。先に会場に行く?それとも荷物置きに行く?」

堅苦しい挨拶もなにもない。それこそ、しばらくぶりにきた親戚のお家のようなのだ。

セラーでコンサート まずは演奏会場である地下のワインセラーに行くことにする。階段を降りて行くにつれどんどん強くなる幸せの香り。ひんやりとした地下のワインセラーはぶどう酒の香りに満ちていた。ずらっと並ぶ樽とワインの瓶が静かに静かに横たわっている。もう、たまらな〜い。

私達の演奏場所には樽の間に綺麗な薔薇の花束。そこだけライトがあたり樽の木に薔薇の色 が映える。
靖奴客席からしきりに「素敵よ〜。」と感激。
早速音を出してみる。すごくよく響いて気持良い。
室温は15°。弾いていると動いているのでそんなに感じないが、座って聴いている靖奴は 寒さに震えながらも
「すごくよく響いてる。すごく上手くきこえるよ〜 素敵〜 でも寒い〜。」
とまたまた感激。

「上手く聴こえる」って、、、、「上手い」んだってば。と芸妓達も勘違い出来る程音が良く響く。無事リハーサルも終わり、控え室へ。

みんなで寛いでいると「すいか切ったからおりておいで〜」と声がかかる。本当に親戚の家感覚でいいわぁ〜。また、このすいかが甘くて美味しい事!

まだ、コンサートが始まるまでには2時間近くある。
晶と雪之丞はお昼ねタイム。靖奴、紅玉、春奴は街に探検へ。
小布施といえば栗ようかんが名物らしいとのことで紅玉が買って来た栗ようかんを皆で一口づついただく。これがまたまた、すごく美味しい。栗が丸ごと入っているのではなく栗きんとんをかためたような感じ。栗の味がすごく濃い。小布施は栗の名産地でもあるらしい。

そして、あたりが暗くなってきた夜7時からコンサート開始。
ワインの香りに囲まれてのコンサートはリラックスムード。
途中で、「今弾いた曲はなんという曲ですか?」という質問も受けたりする。
こういうのってなんとなく嬉しい。

酒束でにっこり こうして無事コンサートも終盤を迎える。普段だと、ここで花束を頂くことが多いのだが、「夏なので花だと枯れてしまうから」というワイナリーの方々の気づかいでそれぞれワインを頂く。しかも2本のワインをきれいにラッピングして、お花を一輪添えていただいて。これぞ、花束ならぬ『酒束』? いやでも顔がほころびまくる芸妓達。

たぶんこのときほど芸妓達の笑顔が輝いていた瞬間はないだろう。

終演後はお客さまと一緒にパーティー。
お料理はみんな手作り。心がこもった美味しい味。そしておいし〜いワイン。
ここのワインは日本のワインというより、ヨーロッパのワインに近い味。今までの日本のワインへの感覚ががらりと変わった。いろいろなワインがあるので「あれがおいしかったっよ〜」とか、「これ、もう飲んだ?」と情報交換しながら遠慮なくワインをいただく。

そして皆さんとの楽しい会話。
あっという間に時間が過ぎる。

そして今夜の宿泊は、ここのオーナーのゲストハウスを解放してくださるとのこと。
鍵を渡され、パーティーで残ったワインや食べ物をたくさん持たせてくださる。
「皆さんで勝手に楽しんでくださいね。」とのこと。
春奴は残っていたパンでちゃっかりサンドイッチ作ったりしてるし。

浴衣で勢揃い そして、車でゲストハウスに到着。
「ひろ〜〜〜い。」
ここは本当にひろ〜い普通のお家。このお家を今夜は使いたい放題!
食器から布団からなんでも揃っている。
お酒も食べ物もふんだんにある。
クーラーなんかつけなくても窓をあければ涼しい風。
蛇口をひねれば美味しい水。
「せっかくだから浴衣着てみようよ〜」
「え〜もう面倒。」なんていいながらいざ着てみれば皆その気。
「いいね〜。やっぱり、日本人は浴衣だよね。」
色っぽい?
もう、先生のいない林間学校というか修学旅行というか合宿というか...野放し状態の芸妓衆。
さすがに時間が遅いこともあり花火まではできなかったが、あまりの居心地良さに盛り上がりにもりあがる。そして、眠くなったら勝手に寝る。1人減りまた1人減り。

..

翌朝。
何時だかはっきりしないけど、なんとなくみんな起き出してくる。
さっぱりすっきりの春奴にくらべ、靖奴は完全に二日酔っている。
昨夜というか、今朝5時近くまで飲んでいたらしい。
それでも朝早起きして温泉に行こう!としていたらしいから立派ぁ。

いつでもどこでも食欲旺盛な芸ストの面々。
さっそく朝食の準備にとりかかる。

材料は、昨夜の残りのパエリア、サラダ、山ほどのとうもろこしとすいか。
調味料は揃っている。
そこで、靖奴が「味噌汁が飲みたい!」と典型的な二日酔い発言。
味噌は「だし入り京懐石味噌」があるけど具は?
そこで目をつけたのが、サラダ。サラダの具をよく洗い、とうもろこしを入れ、めでたく洋風(?)味噌汁の出来上がり。
残りのサラダは小さな器に盛り直し、パエリアは紅玉が炒め直し、立派な朝食の出来上がり。
すっかり夏休み気分
味噌汁のレタスの酸味(ドレッシング風味)がちょっとオツな味だけど、とうもろこしは
「そっか。味噌ラーメンにコーンいれるのと一緒ってことだよね。」
と妙な納得の仕方をする晶。
食後には昨夜から冷蔵庫でキンキンに冷えているすいか。

朝食後は布団でごろごろしながら今後の予定をたてる。
日曜だしちょっと遅くなると帰路の渋滞が予想されるので、早速行動開始。
食器を洗い布団を畳み出発準備。

「ここに1週間ぐらいいたいなぁ。」
「私1カ月でもいたい。」
「でもそしたら東京に帰るの嫌になっちゃうかもね。」

そんなことを言いながら車に荷物を運んでいる時でも通りがかりの近所の方が
「おはよ うございます。」
と挨拶してくれたりする。

そうだよね。
人と挨拶したり、水道の蛇口ひねってがぶがぶ水飲んだり、暑いときは木陰で涼んだり。そういうちょっと前まで当たり前だった生活を蘇らせてもらった感じ。

そして、昼前に出発。
まずゲストハウスの鍵を返すため、再び小布施ワイナリーに。
そこで皆、お土産を購入。ワインもさることながら、ここのぶどうジュースがものすごく美味しいのだ。これはお勧め。
鍵も返し、ワインやジュースを購入し勝手に「また遊びにくるね〜」と心のなかで叫びながらワイナリーを後にする。

この日はとっても晴れていたけど、窓を空けて走れば涼しい。
道のまわりは一面果物畑。もも、ぶどう、りんご、くり。なんかうれしくなっちゃう。
休日のせいか、観光客も多い。

まずは「岩松院」へ。
本堂に入っていくと何故かみんな寝っ転がっている。
「何ごと?!」と思ったが、これは葛飾北斎の「八方睨み鳳凰図」を見るため。さっそく芸妓達も寝っ転がり天井を見上げる。
圧巻!鮮やかな色使い。説明書を見て気がついたのだが、富士山の姿が「かくし絵」となっている。もう一回寝っ転がって確認してみたりして。
ここには戦国の武将福島正則公の霊廟もある。

ひととおり見学した。さて、どうしようか。
そろそろお腹すいたね。お昼食べようか。
ということで今度は小布施P.Aにあるハイウェイオアシスを目指す。
それぞれ、そば、栗御飯、笹寿司を「おいしいからちょっと食べてみて」と味見しつつ食べる。
そばはさすが信州。栗は甘〜い。
仕上げはソフトクリーム。「牛乳」「巨ほう」「りんご」「栗」といろいろ種類があるけど、やっぱり基本の牛乳がおいしい。

そして土産コーナーをぶらぶら。すごく充実していておいしそうなものが一杯。
雪之丞は「地方限定お菓子」探し。「カール松茸味」「キャラメルコーンりんご味」「アポロ栗味」「ベビースターラーメンしめじそば味」、せんべい「ばかうけ」の大判「大ばかうけわさび醤油味」。その他いろいろ。

春奴は御飯に乗せてもよし、きゅうりにつけてもおいしい味噌(細かい野菜や木の実が混ざっていてびりから味)を買う。それを見た紅玉も「おいしそう!ちょっと買ってくる」とあわてて買いに走る。

おなかも一杯、お土産も買った。
もう、大満足。でも本当はもっともっと滞在したいんだけど。
そろそろ東京にむけて帰らなければ。。。。。

ここの駐車場で解散。
みんなすっかり子供に戻り夏を満喫した芸妓達の夏休みもこれで終わり。
楽しかったね!来年もまた絶対来たいね!毎年来たいね!